石見 英里奈さん
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)4年生・International Development Studies専攻


【世界に起こる「叫び」に寄り添う】

情熱を持ち、行動を起こす力

 初めて「叫び」に触れたのは、インドネシアの空港に降り立った時だった。母親と共に荷物を抱えゲートを歩いていると、幼い少女が歩み寄って来て、その荷物を無理やり運ぼうとした。当時、石見さんは9歳。彼女よりも幼い子が靴も履かず、汚れた手でチップを要求する姿を見て、衝撃と同時に罪悪感を覚えた。「私は何て恵まれているのだろう」と。「何かできることがあるのではないか? 世界では、こんなことがたくさん起こっているのでは?」と心の中で自分に問いかけた。幼い頃から父親の仕事の関係でロンドン、日本、シンガポール、インドネシアなど、世界を飛び回っていたせいもあって、この経験は先進国と発展途上国の生活の現実を垣間見た瞬間だった。
 日本に帰国後も、このような問題に対して「何かしたい」という思いをずっと持ち続けていたが、現実に行動を起こすきっかけが掴めなかった。そんな時、進学先の慶応義塾大学に1年間の交換留学プログラムがあることを知った。UCLAに国際開発学(International Development Studies)という学部を発見し、新たな活動の場を求めて進学した。そこで、学生団体のダルフール・アクション・コミティー(DAC)を知った。
 ダルフールとは、アフリカ北西部に位置する人口約600万人の地域である。2003年2月に内戦が勃発し、推定20万人が殺害されたと言われている。このジェノサイド問題に対して、DACはイベント開催や募金活動を通して援助を展開しており、これが自分のやるべきことだと確信した。そして、本格的に活動に参加していった。
 活動内容としては、ホワイトハウスにPKOのダルフール支援の拡大要求の手紙を送ること、映画祭を開催し「紛争、虐殺、難民」などのキーワードを盛り込み、人々に意識付けること、北京オリンピックのメインスポンサーであるVISAの本部に直接行き、中国政府のダルフールへの関係の見直しを求める抗議文を提出することなど、その活動は多岐にわたる。
 「時々自分のしていることが本当に意味のあるものなのか? ただの自己満足ではないか? と落ち込むこともよくあります」と語る。そんな時、いつも思い出すのはイベントに参加してくれた人たちのこと。「ダルフールの問題を知って刺激になった」「私もあなたたちの活動に参加したい」などの声に励まされる。「誰もが社会にインパクトを与える可能性を持っていると思います。後はその情熱や思いを形にすることが大切。そしてその思いを形にできる場を提供していきたいです」。
 今後の目標は、日本帰国後も活動を続けていくことだ。そして、将来的にはUNHCRなどの国際機関で経験を積むことである。「日本ではまだまだこのような問題に対しての意識や活動が消極的です。だから、1人でも多くの人にこの問題を知ってもらうためのイベントや実際の活動の場を創っていきたいです。どんな逆境にいても、ダルフールの人たちのように強く、希望を持って前向きに生きていきたいです」。そう語る石見さんの笑顔は、多くの助けを求める人たちに希望を与え続けるに違いない。

ダルフールの詳細はhttp://savedarfur.org
また、石見さんのブログはhttp://ameblo.jp/bethechangeyouwishtosee


VISA本社での抗議
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(Lighthouse2008年08月16日号より転載)